バックナンバー:イアン・ダンバー博士インタビュー2006

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ダンバー博士インタビュー
~2006年度 イアン・ダンバー博士 インタビュー~今回の出場者インタビューは、特別編として、K9ゲーム®の生みの親、イアン・ダンバー博士のインタビューをお送りします。K9ゲーム®誕生の背景や、 「愛犬家と家庭犬のための」K9ゲーム®へのこだわり、さらには日本をこよなく愛するその理由まで、たくさんのお話を伺ってきました。 2006年10月に開催される第2回ジャパンK9ゲーム®へもなみなみならぬ期待を寄せていらっしゃいます。このインタビューを読んで、おもしろそうか も?と思った方、オフィシャルメンバー・オフィシャルプロメンバーの登録はこちらです。

■K9ゲーム®が誕生した理由
本部: K9ゲーム®が誕生した背景を教えてください。
博士: トレーニングをゲームにすることを最初に思いついたのは、ドッグトレーナー向けのワークショップをやっている時だった。 イヌにリードを引っ張らせずに歩くという練習をしていたんだ。イヌがオスワリをするまで待って、座ったらおやつをあげて1歩前に歩くっていうだけの、い たって簡単な練習を11人のトレーナーにやらせていたんだけど、誰もかれも全く出来ない。「オスワリ、オスワリ、オスワリ!!」って何度も指示を出すト レーナーもいれば、1歩と言っているのに3歩歩くトレーナーもいて、私は思わず「どうすればキミたちは僕の指示通りにやってくれるんだ?」って言った。そ して思ったんだ。「ドッグトレーナーさえ指示通りに動けないんだから、一般の飼い主にトレーナーの指示通りにやってもらうのは至難の業だ」って。
その時、カナダから来ていたキャロリン・クラークというトレーナーが「サイモンが言いました」と言ったんだ。知ってるだろう?子どもの遊びで、鬼が「サイ モンが言いました、頭に手を置いて」と言ったら他の子はその通りにしなくてはいけないが、「サイモンが言いました」と言わなかったのに頭に手をやったら失 格になるっていうゲームだ。それを聞いて、「なるほど!」と思ったよ。トレーニングをゲーム形式にして、指示に従わなかった人を失格にしていけばいいん だ、って。その通りにやってみたら、最初の3分でほとんどのトレーナーがいなくなった(笑)。残った4人は、私の指示通りにやったから、ゲームが終わる頃 にはイヌにリードを引っ張らせずに歩かせることが出来たよ。
それで気づいたんだ。これは、生徒に言うことを聞いてもらうためのすばらしいテクニックだってね。それから、シリウス(ダンバー博士が主催するパピート レーニングスクール)のクラスで使うためのゲームを作り始めた。1回のレッスンで2つか3つくらいゲームをやっていたかな?生徒がすごく喜んで、楽しんで くれたので「じゃあ大会をやってみようか」ということになったんだ。その時から、K9ゲーム®と呼んでいたよ。これが、K9ゲーム誕生までのいきさつ。
ちなみに今、シリウスではカリキュラムを作り直していて、今後パピーIの次のパピーIIでは、すべてのトレーニングをゲーム形式で行うようになる。このや り方だと、イヌも人もずっと早く学ぶし、ゲームに勝ちたいから一所懸命やるし、何よりも楽しいんだ。すばらしい教え方だよ。

■K9ゲーム®との出会い
本部: 第1回K9ゲーム®は、いつ、どこで開催されたのですか?
博士: 観客を入れたイベントとしては1995年にサンフランシスコで開催したのが初めて。翌年はロスアンジェルス、そしてその次の年はワシントンD.C.だった。そしてその後3年間は、カナダのトロントにあるトロント・スカイ・ドームという野球スタジアムでやったよ。
本部: 最初から観客を入れたイベントができるほど十分な参加者が集まったのですか?
博士: 人を集めるのはまったく大変じゃなかったよ(笑)。それどころか、参加したいと言う人が多すぎて、断らなくてはいけなかった。チーム対抗の大会だから、各チーム9人と9頭のイヌとすると、それだけでも72人と72頭のイヌになる。8チームが限界だった。
参加者は、トレーナーが自分の受け持つクラスの生徒を集めてチームを作ったんだ。K9ゲーム®の最大の売りは一般の愛犬家のための競技だということだから ね。その頃の、まぁ今もだけど、イヌのための競技といったら、プロの訓練士が参加するものばかりだっただろう?訓練競技会とか、シュッツフントとか、ハン ティングドッグ・トライアルとか。だけど、これは一般の愛犬家のための競技。だからすごく楽しい。みんな勝つために一所懸命がんばるけど、勝てなくたって 別にいいから、他の競技みたいに真剣にやりすぎて他の参加者を批判するようなことは起こらないんだ。
本部: K9ゲーム®を始めた頃は、どのゲームが一番のお気に入りでしたか?そして今は?
博士: 一 番は、間違いなく「イヌとワルツ」だね。このゲームには毎回本当に驚かされる。このゲームにはルールは一切なくて、ハンドラーとイヌのペアか、9人と9頭 (実際は何ペアでやってもOK)が、音楽に合わせて自分たちで考えた振り付けで踊るんだ。曲に合わせてイヌと踊るフリースタイル・ヒーリング(ヒールワー ク・トゥー・ミュージックとしても知られる)をやる人が多いけど、過去には寸劇や、オペラなんかもあったよ。ハンドラーの無限の想像力は本当にすばらし い。1995年にK9ゲーム®を始めた時も、現在も、私の中ではこのゲームが変わらず一番だね。
もう一つすごく気に入っているゲームがミュージカルチェア。このゲームには、真の家庭犬に必要な要素がすべてそろっている。稲妻のように早いオスワリと、 どんな誘惑にも負けないオスワリ、この2つをしっかり教えることができれば、そのイヌは最高のコンパニオンになるからね。それにこのゲームは誰でも参加で きる。だから楽しいんだ。
ドギーダッシュも同じ。これは2頭ずつレースをして、勝ったほうが次のラウンドへ進むというゲームだけど、ここでは呼び戻しよりも、その後のオスワリの早 さの方が重要なんだ。このゲームのすばらしいところは、早い呼び戻しはもはや当たり前になっていること。どのイヌも、すばらしい呼び戻しができるんだ。早 い呼び戻しというのは、イヌが「ママのところに走っていくのが大好き!」「ママのところに行ってオスワリをするのが大好き!」と言っているということだか ら、気質のテストでもあり、飼い主との信頼関係のテストでもある。早い呼び戻しほど飼い主とイヌとの信頼関係を表すものはないよ。それに展開の早いゲーム だから見ていて楽しい。
あとはトイレトリーブ。レトリーブ(物を持ってくる)ゲーム。これは、上手なハンドラーとイヌがやると、最高に盛り上がるんだ!イヌが本当によくトレーニ ングされていて、ただ物を持ってくるだけじゃなくて、ハンドラーが指定した物だけを持ってくる。もちろん、触ってはいけないペナルティー・ボーンには触ら ずにね。すばらしいよ。

■第1回ジャパンK9ゲーム®開催!
本部: ジャパンK9ゲーム®に参加したイヌの印象はいかがでしたか?
博士: 驚いたよ、すごく良くできていた。他のイヌに対しても友好的だし、落ち着いていたしね。最初(2005年6月、山中湖に て行われたK9ゲーム®ワークショップ)のゲームの時でさえ、トレーニングのレベルはなかなかのものだった。そしてその秋に東京でやった時のトレーニング のレベルはかなり高かったよ!ほとんどのチームに、一人か二人、すばらしいハンドラーがいた。他のメンバーも、もちろん上達の余地はあるけれど、トレーニ ングにかなりの時間と努力を費やしたことは明らかだったね。
本部: ハンドラーについてはいかがでしたか?
博士: 全く異なる文化を持つ国で、K9ゲーム®のような変わったことをやる時は、「どう(受け止められる)だろう?」っていう 心配もあるんだけど、日本のハンドラーは私の予想をはるかに上回っていたよ。ただ、日本人にはK9ゲーム®のルールは少し理解しにくかったみたいだね。 ルールの第一条に「ルールはその場で変更されることがあるが、文句は言わないこと」って書いてあるだろう。K9ゲーム®の一番の目的はイヌと一緒に楽しむ ということなのに、それを忘れて、小さなルール変更に文句を言う人たちがいたのは残念だった。 K9ゲーム®は確かに一般愛犬家のための競技イベントだけど、一般の人に、イヌに優しいドッグトレーニングを知ってもらうためのPRイベントでもある。こ のイベントを開催する大きな目的は、イヌのしつけは実はとても簡単で楽しいものなんだということを一般の人々に見せて理解してもらうことなんだ。観客のた めのパフォーマンスだから、「魅せる」ためにルールを若干変えたりすることはあるよ。
本部: 博士から見て、第1回ジャパンK9ゲーム®は成功だったと思いますか?
博士: 最高だったよ!!本部の大会運営は完璧だった。72人と72頭を動かすということを考えれば、あれだけ正確に、時間通り に進行させるというのは大変なことだよ。今回は初の試みだったから会場の規模も小さくて観客動員数もまだまだだったけど、観客は回を重ねるたびに評判が広 まって増えていくと思っている。見に来てくれる人をもっと増やして、TVにも出したいね。イヌに優しい、楽しいトレーニングというものをもっと多くの人に 知ってもらうにはTVが一番効果があるからね。
本部: ジャパンK9ゲーム®の2日間で、一番楽しかったのはどんなことですか?特に印象に残ったイヌやハンドラーはいましたか?
博士: 東京のゲームを思い返した時にまっさきに思い出すのが、「イヌとワルツ」の2つのパフォーマンスだね。ビンゴと西田さん (チーム・ファンドッグス)の演技はただただすばらしかった。非の打ち所のないトレーニングもさることながら、僕がすばらしいと思ったのは、彼がイヌと演 技することを心から楽しんでいたこと。イヌも、それに応えて、エネルギッシュに走り回っていただろう?あれが一番印象に残ったパフォーマンスだね。もう一 つは、チーム「ドッグス・イン・ブラック」のパフォーマンス。あの演技はホントにクレイジーとしか言いようがないよ(笑)。日本でK9ゲーム®を開催する ことを思い立った時、まさにああいうパフォーマンスを期待していたんだ。日本人は楽しいことが大好きだし、クレイジーなことも好きだから「犬とワルツ」は 日本人にすごく向いている気がしていた。この2つが、ジャパンK9ゲーム®での特別な思い出だよ。
本部: 今後もっとたくさんの方に参加してもらえるよう、ハンドラーの皆さんにアドバイスをください。
博士: 我々のやろうとしていることが何なのかを知ってもらうことだね。表向きは愛犬家と家庭犬のためのチーム対抗競技だけど、 それ以上にこれは観客のためのパフォーマンスなんだ。いつでも最高の笑顔で、スポーツマンシップに則って競技をしてほしい。ジャッジの判定に納得がいかな いこともあるだろうけど、彼らも一所懸命やっているし、参加者には何よりもトレーニングの成果を、そしてトレーニングの楽しさを観客に「見せる」ことを一 番に考えてほしいな。これが僕からの一番のアドバイスだよ。とにかく、参加して、楽しんでほしいね。
本部: 今年のK9ゲーム®にはどんなイヌやハンドラーに参加してほしいですか?子イヌはどうでしょう?
博士: 僕 の愛するマラミュートを除いては(笑)、もっといろんな種類のイヌとハンドラーが見たいね。ハンドラーに関して言えば、子どもと男性に参加してほしい。あ とは、ハンドラーの家族にはぜひ応援に駆けつけてほしいね。子イヌは…。このゲームは、ある程度しっかりトレーニングされたイヌでないと難しいし、会場も イヌや人でごったがえして騒がしいから、正直なところ1歳以下の子イヌにはあまり向かないと思う。
イヌについては、いろんな種類の、特にめずらしい犬種が見たい。訓練競技会に参加するイヌと言えば、イギリスならボーダーコリー、アメリカならゴールデン ばっかりだけど、K9ゲーム®では、例えばドギーダッシュでブルドッグが勝ち上がったり、ミュージカルチェアに豆粒サイズのヨークシャーテリアなんかが出 てくれると嬉しい。だから、もっと見たいのは、いろんな犬種と子どもと男性、だね。

■ダンバー博士 来日予定
本部: 日本での今後の予定を教えてください。
博士: 今年はすごくたくさんあるんだ!日本へは3回来る。最初は7月で、東京でペットショップや獣医師向けのセミナーと、ドッ グトレーナーや愛犬家向けのビデオセミナーをやる。ビデオセミナーでは、トレーニングテクニックをビデオを見ながら説明するよ。それから福岡で愛犬家のた めのセミナー。その次は9月末のK9ゲーム®本選のために来日して、最後は12月に、JAPDT(日本ペットドッグトレーナーズ協会)の栄えある第1回カ ンファレンスのために戻ってくるよ。
本部: 日本に来る一番の楽しみは何でしょう?
博士: 意地悪な質問をするね!(笑)本当のことを言うのはあまりにも失礼なんだけど(爆笑)、楽しみは、お寿司、刺身、酒、ビール、そしてカラオケで歌って踊るクレイジーな日本人!
いや、もう少しまともな答えを…。日本に滞在するのが本当に好きなんだ。人も好きだし、文化もイギリスと似たものがあるしね(博士は米国在住のイギリス 人)。僕が外国人だから皆特別良くしてくれるということもあるんだろうけど、毎回とても楽しいよ。
本部が毎回、すばらしいもてなしをしてくれるんだ。旅館に泊まりたいといえば京都や奈良のすばらしい旅館に連れて行ってくれるし、レストランではテーブル についたら、オーダーしなくても美味しい料理が次から次へと出てくる。僕は、好き嫌いがないから何でも食べれるんだ。ウニも納豆も生魚も、大好き。日本で の最も楽しい思い出は、セミナー後の本部との食事だと言ってもいいね。彼らと仕事が出来ることを本当に嬉しく思っているよ。
ただ、もったいないと思っているのが、言葉の難しさ。日本語は簡単に学べるものではないからね。自分の言っていることを分かってもらえないのは実はとても ストレスなんだ。でもね、逆にありえないような勘違いをしていることに気づいて、みんなで腹がよじれるほど笑うこともあるよ!
本部: 日本のイヌ文化はここ数年でめざましい変貌をとげ、今後も大きく成長していくと思います。博士は日本の愛犬家とドッグトレーナーにどんなことを期待しますか?
博士: まず、日本のペットドッグトレーニングという分野の誕生と成長に関われたことをとても光栄に思っている。何より、ペット フードの販売会社でありながら、日本のイヌ文化の向上のため、トレーナーや愛犬家、そして獣医師やペットショップの教育に力を入れてきたレッドハートの功 績を心から称えたい。
日本のトレーナーについて言えば、アメリカのドッグトレーナーが積み上げてきたものを模倣して、そこから学べるという利点があったにしても、アメリカのト レーナーが25年かかってなしとげたことを、日本のトレーナーは5年で習得したといえるだろうね。現在はアメリカのドッグトレーナーが間違いなく世界最高 の知識と技術を持っているけれど、このままいけば10年か15年したら日本が一番になって、新しいトレーニングの技術が日本からたくさん生まれると思う。
その理由はいくつかあってね。一つは、日本人は人の話をよく聞いて、指示通りやってくれる(笑)。イギリスでセミナーをやっても、話は聞かないし、聞いて いるそばから反論して、指示通りになんてぜったいに動かないよ!イギリスのドッグトレーナーほど論争好きで強情な人種もいないだろうね。まぁ、それはとも かく、日本人はアメリカのトレーナーが作り上げたものを模倣して、それをベースにもっといいものを作ると思うよ。
もう一つの理由は、ドッグトレーニングが今後、「オート・シェイピング」の方向に進むと考えているからなんだ。「オート・シェイピング」というのは、電子 機器を使ってイヌの良い行動を強化していくというものだ。要は、機械が一日中イヌの行動を監視して、イヌが望ましい行動をしたら、人間に代わって自動的に 報酬を出すんだ。悪いことをした時に罰を与えるんじゃないよ、良いことをした時にごほうびを与えるだけの機械だからね。このやり方で、無駄吠えとか、か じっちゃいけないものをかじるとか、トイレの失敗といったよくある問題行動が減っていくと思う。なんといっても日本の技術はすごいからね!その証拠に、僕 の携帯電話は世界中で使えるはずなのに日本と韓国では使えない。おかしいだろう?世界中の最先端技術を総動員してもこの2カ国には追いつけないってことな んだよ(笑)。そんな国のドッグトレーナーだから、オート・シェイピングがきっと向いているよ。僕も、あと5年くらいは日本に来て、日に日に進化していく 日本のイヌ文化に関わっていきたいと思っている。また来月日本で皆に会えることを楽しみにしてるよ!

ダンバー博士の、今回のスペシャル・インタビュー、いかがでしたか?これを読んで、イヌのしつけやK9ゲーム®を少しでも身近に感じて頂けたなら嬉しいです。
子イヌの頃からきちんとトレーニングすることはもはやイヌの飼い主の常識。今までトレーニングせずにきちゃった…という飼い主さんも、K9ゲーム®ならイ ヌ仲間とオフ会感覚で楽しくイヌをしつけられるので、この機会にぜひチャレンジしてください!参加者の中には、プロのトレーナーさんもいらっしゃるので、 その方たちのお知恵を拝借するのもアリ♪私たち本部も公式大会でたくさんのワンちゃんにお会いできることを楽しみにしています。
K9ゲーム®教室紹介

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